新型ハイエースを初めて知る方へ
夏発売の新型「セフィーロ」のおかげで年後半持ち直し、かろうじて一ケタの落ち込みにとどめたが、このヒット車がなければ、20%の大幅減となっていた可能性もある。
メーカーにとって、どのモデルからどの程度の利益が出るのかは、いわゆる企業秘密に属する。
また、実際はメーカー自身も正確な数字を把握できていないともいわれる。
予定通りに売れているモデルかどうか、研究開発費や一般管理費などの共通費をモデルごとにどうふりむけるか、管理会計でみるか財務会計でみるかなどによって計算値が異なってくるからだ。
ただ、おおよその線は各種資料から推定できる。
(単位)コストは重量に比例する自動車業界では「コストは重量に比例する」といわれ、これまでに「重量一グラムにつき、コストはほぼ一円」という「経験則」ができあがっている。
したがって、単位重量当たりコストにクルマの重量をかけると、そのモデルのコストがおおよそ明らかになる。
メーカー出荷価格(標準小売価格からディーラーマージンを差し引いた価格)との差が、当該モるか財務会計でみるかなどによって計算値が異なってくるからだ。
ただ、おおよその線は各種資料から推定できる。
「1グラム=1円」の経験則は94年度上期(4月から9月、Tタ自動車は1月から6月)でみても、生きている。
大手5社に同期間のモデル別生産台数をヒアリングし、モデルごとの重量と掛け合わせて、全モデルを総計すると、期間中の「生産重量総計」が明らかになる。
期間中の製造コストをこの重量総計で割ると、単位重量当たりのコストが求められる。
5社平均の単位重量当たりコストは、製造原価ベースで一キログラム当たり974円、販管費を含めた営業費用ベースで同1093円。
単純計算すると、大衆車クラスの一トンのモデルならばコスト(営業費用ベース)は109万円、高級車クラスの2トンのモデルならば218万円となる。
現実には「大衆車と高級車はつくり方が異なり、エレクトロニクス化の度合いも違うため、キロ当たりコストは大衆車の方が低く、高級車の方が高くなる」(大手メーカー開発担当者)とみられるが、いずれにせよ、いくらN産のリッターヵー、「Mーチ」(SSクラス)がヒットしても、「Cドリック/Gロリア」(LL)「Lーレル」(L)、「Sイライン」(L)などが計画通り売れない限り、N産の企業収益改善には寄与しないことは事実のようだ。
N産が「94年度が収益のボトムで、95年度から反攻に転じる」と期待するのは、94年夏に発売した新型、「Cフィーロ」(L)がヒットし、95年6月に「セド/グロ」のフルモデルチェンジが控えているからにほかならない。
このクラスでヒット車が続けば、利益貢献度は大きい。
技術に重きを置くN産には、古くから「高級車をたくさん売り、高級車で食っていく」という意識が染み込んでいるという。
しかし、経営環境の激変を前に、経営幹部のなかには「小さな車でも利益を出す体制を作らなくてはならないとの声も出始めている。
(乗用車商品開発担当のS取締役)単なる不況を超えたこれらの環境変化は、伝統的な意識に変化をうながしている。
高級車だけでなく大衆車でも利益を出すには手メーカーに比べ、N産の単位重量当たりコストが高く、あらゆるコストダウンが必要だ。
だが、その点で気になるのは、N産の94年度上期の一キログラム当たりコストは1250円強と大手5社中もっとも高いうえ、しかも、前年に比べ上昇していることだ。
前年同期に比べ2%近く上昇している大幅な原価低減を実施しているにもかかわらず、単位重量当たりコストが上昇しているのはなぜか。
考えられる原因のひとつは、原材料費など変動費の部分こそ部品共通化などによってコスト削減がかなり進んだが、人件費など固定費の削減があまり進んでいないことだ。
この場合、分母(重量)の減少に比べ、分子(コスト)の減少が小さくなり、コスト/重量の比率は上昇する。
実際、93年度までをみると、N産は損益分岐点比率の高さが際立っている(図III-2)。
損益分岐点とは、コストをちょうど回収できる売上高を表す。
実際の売上高がこれを上回れば利益となるため、損益分岐点は低ければ低いほどいい。
N産はTタより約20ポイントも高いが、これは固定費の削減が売上高の落ち込みに追いつかないためだ。
有価証券報告書によると、売上高に占める労務費(いわゆるブルーカラーの人件費)の比率はTタが5.4%(94年6月期)であるのに対し、N産は7.7%(94年3月期)もある。
また、自動車一台当たりの人件費(労務費プラス管理費、ブルーとホワイトの合計)はTタが15万円なのに対し、N産は20万円を超える。
もし、自動車一台当たりの人件費をTタ並みに下げようとすると、計算上、N産は従業員規模を77%に縮小、すなわち1万人以上減らさなくてはならない。
N産の収益回復の最大の課題は、もちろん国内販売にある。
しかし、明らかにコストダウンの余地も残っている。
そして、その対象は原材料費などモノの段階を過ぎ、いよいよヒトの段階に踏み込む時期にきている。
お化粧決算の限界含み益が足かせN産の体質転換を遅らせるものがあるとすると、円高などの外部要因のほかは、同社が抱える膨大な「含み益」だ。
逆説的に聞こえるが、同社はこれまで土地・株式を売っては、その売却益で一息つき、しばらくすると市場が回復したため、痛みを伴う抜本的な経営改革を先送りし続けることができた。
このため、いつまでも「規模だけ2位」の座に安住し、抜本的な収益力強化策をとれなかった面がある。
たとえば同社は、94年度前半に株式を売却し、約330億円の株式売却益を計上した。
また、95年春には、関連会社と共同所有する東京都心のピルを総合商社に譲渡。
これによって、N産は95年度に、約180億円の特別利益を計上する予定だ。
資産売却は、たしかに設備合理化や人員削減といったリストラ(事業の再構築)の原資となる。
また、決算を「化粧」することで各種財務指標が良くなり、広い意味での信用力アップにつながる。
一般的に、企業収益は「経常利益」に代表される場合が多い。
このため、N産はこれまでに経常利益よりも前の「営業外損益」の段階で資産売却益を計上し、これによって連続経常赤字を免れたこともあった。
94年3月期がその好例だ。
営業損益は2年連続の赤字だったが、514億円の株式売却益を上げ、経常段階で40億円強の黒字を確保した。
表面的にせよ、ここで黒字化したため、95年3月期に経常赤字となったが、連続赤字の「汚名」を着せられずに済んだ。
同社は東京・銀座に本社を持つこともあって、含み益も他メーカーに比べ大きい。
その額は土地、株式合わせて2兆円近くにのぼるといわれる。
この膨大な含み益は、本来は株主の資産だ。
含み益の活用が、中長期的にN産の体質強化に寄与するならば、株主の利益と合致しよう。
しかし、単に含みを切り売りして、会社の延命を図るだけならば、株主の利益とは反する。
95年3月末の株式含み益(推定)は、およそ4兆1450億円。
一年前に比べ1000億円減少した。
過去10年間をみると、同社は実に5000億円余りも含み益を吐き出している。
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